2017/03/17

「予習を求めず、教科書を易しく書き換え、生徒に考えさせる」 -- 新卒一年目の高校教師の実践


 以下は、新卒で高等学校での勤務を始めたのOH先生が、OBも参加するゼミ合宿で発表してくれた最初の一年間の実践の振り返りです。

  いきなり親バカ的コメントで恐縮ですが、一年目でこれだけの実践ができて、なおかつ(こちらの方が重要だと私は思っているのですが)彼自身が幸せな毎日を送っているというのはすばらしいことだと思います。

 教職に興味をお持ちのかた、ぜひお読み下さい。



ゼミ合宿で発表するOH先生

*****

 こんにちは。私は、昨年度教英を卒業し、X県の公立高等学校に勤務しているOHと申します。X県の高等学校で働き始めて約一年が経過しました。今日は、僭越ながらこの一年間の私の授業実践を紹介させていただきたいと思います。私自身教員一年目で、初任者として至らない点が多く、学ばなければならないことが多い立場ですが、私の授業実践が一人でも多くの方のお役に立つことができれば、とても嬉しく思います。

  私が現在主に受け持っている生徒は、特別進学コースという、大学進学を目指した授業が行われるコースの生徒です。特別進学コースは、高校入学時に、希望した生徒が入ることのできるコースなので、学習規律は整っており、授業だけでなく、予習や復習にも一生懸命に取り組むことができる生徒です。しかし、特別進学コースといえども、学力差はかなりあるため、一生懸命に学習に取り組むけれども、なかなか頑張りが結果として現れないという状況があります。この状況を少しでも改善するために、一年間、生徒の学習状況を踏まえた上で、自分なりの授業実践を重ねてきました。

  まず、生徒の学習状況についてですが、生徒を観察すると、学習状況にある特徴があることが分かりました。それは、一生懸命に頑張る生徒ほど予習に時間をかけ、予習や授業中に、単語の意味を調べるためによく辞書を引くというものです。このような特徴を持つ生徒の英語力について、前任の先生に尋ねると、確かに頑張り屋さんが多いけどとにかく英語が読めない、ということを言われました。このことを踏まえ、私は「生徒に、教科書の英文と格闘し、とにかく自力で英語を読ませること」という目標を立てました。

 生徒が自力で教科書の英文を読むことができるようになるために、以下の三つのことを実践しました。

 一つ目は、生徒に予習を求めませんでした。大きな理由は、予習をさせると、英文の意味を考えることなく、未知の単語に出くわす度に、辞書を引いて意味をノートに書くという、極めて機械的な作業に終始してしまうからです。このように、予習をして授業に臨もうとする態度自体はきちんと評価されるべきですが、このような機械的な予習すると、英語の勉強をした気になって終わってしまっているのではないか、という仮説を私は持っています。機械的な英語学習を繰り返すだけで、果たして、英語に対する知的好奇心が刺激されたり、英語の実力がついたという実感が湧いたりするのだろうか、という疑問を持っています。また、機械的に辞書を引く習慣をつけると、この単語はこのような意外な意味があったのか、といった感動は生まれにくいのではないでしょうか。もちろん、辞書を引くこと自体は否定されるべきではないと思います。似たような意味を持つ単語の些細な違いを調べたり、語法を調べたりするといった辞書指導を行っているのであれば、むしろ推奨されるべきだと思います。しかし、今年度は辞書指導ができなかったため、作業として辞書を引くことを避けるために、予習は求めないこととしました。

 二つ目は、教科書改作を行いました。具体的には、教科書の英文の中で生徒の語彙レベルよりもはるかに高いと思われる語があれば、易しめの類義語で言い換えました。生徒が英文を読む様子を見ていると、分からない単語に出くわすとそこで考え込んでしまい、なかなか読み進められないことが分かりました。いずれは未知語を推測させる指導も必要になると思いますが、今は自力で英文を読み通すことに重点を置くことを目指しているため、語彙レベルの配慮を行いました。また、具体例がふんだんに交えられていてパッセージが長いと感じた時は、具体例の一部を削除し、文章の論理構成が保たれる程度に改作を行いました。これは、「これぐらいなら読めそうだ」というやる気を維持させることと、文章を丁寧に読ませることを目指して行いました。

 三つ目は、教科書改作と少し関連しているのですが、教科書の本文すべてを用いずに指導を行いました。’However’という語があり、その後の大まかな内容が予測可能な題材を用い、その内容を日本語書かせるというタスクを行いました。生徒には、’However’以後の英文を空欄にしたワークシートを配布し、’However’の前後では内容のイメージが真逆になるということを意識させながら、ワークシートに日本語で記入させました。

 以上の三つことを実践した結果、自力で英文を読もうとする生徒が年度当初と比べると増え、英文を何度も読みながら自力で考えることができる生徒も増えたように感じています。ここまで私の一年間の実践を紹介させていただきました。私の実践が直接役に立つものかどうかは分かりませんが、読者の皆様に何らかの示唆を与えることができれば大変嬉しく思います。読んでいただきありがとうございました。



ゼミ合宿の一環として錦帯橋にも行きました

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

「公開ワークショップとシンポジウム:英語教育の身体性」の参加者の振り返り

5/20(土)に小口真澄先生( 英語芸術学校マーブルズ 主宰・代表講師)をお呼びして開催した「公開ワークショップとシンポジウム:英語教育の身体性」は大成功でした。関係者を除いても65名(注)の参加者が、さまざまなことを感じ、考えさせられた企画になったのではないかと自負していま...