2016/12/19

Dual Language Programmeなどのマレーシア教育事情を卒業生から聞きました


現在は予算措置が終わったのでなくなってしまいましたが、かつて教育学研究科にあった教員のための修士号獲得留学プログラムで私のもとで学んでいたマレーシアのRさんが久しぶりに広大キャンパスを訪れてくれました。

ひとしきりお互いの様子や世間話をした後は、Rさんがマレーシアの高校英語教師ということもあり、マレーシアと日本の教育事情に関する情報交換となりました。





話を聞いているとマレーシアの状況には日本の状況と似たところが多くありました。

・PISAテストでの国際ランキング比較により、政治家の方から矢継ぎ早に教育改革計画が打ち出されているが、教師の方はかえってそのための書類仕事などに追われて肝心の生徒と接する時間や授業準備する時間が削られている。

・それなのに教育予算は全体として削られている。

・(「モンスター・ペアレント」といったことばはないものの)教師に不平不満を激烈にぶつける保護者はいる(彼ら・彼女らのキメ台詞は "See you in court" 「裁判所で会いましょう」とのこと)。

・(マレーシアは旧英国植民地であり英語のテレビ放送も存在しているものの)国内で生活している限りは現在では特に英語は必要ではない。英語が必要か否かの認識については社会階層による違いが大きく、いわゆるエリート階層の保護者と子どもは英語学習に熱心だがその他の保護者と子どもはそうでもない。

・英語力測定についてはCEFRを統一基準として採択する方向で動いている。

・英語力が足りない英語教員については勤務時間後にBritisch Councilが主催する語学プログラムに参加しなくてはならない。(ただしその費用は国がもつ)。

また、マレーシアは2003年に小学校での算数と理科を英語で教える政策 (PPSMI) が採択されましたが、事実上の困難点が続出し、その政策を2012年に打ち切った過去があります。

しかし、現在は、一部の小中学校で算数・数学や理科、つまりはいわゆるSTEM -- Science, Technology, Engineering, and Mathematics -- 系の科目を(現地語ではなく)英語かマレー語で教えてもよいというプログラム (Dual Language Programme; DLP) がスタートしているそうです。

ただしその DLP を実行するためには、保護者の同意、校長と教員の同意と希望、必要な教材や設備などが整っていることが条件だそうです。


参考サイト
Malaysians Need The Dual Language Programme To Enhance English Proficiency In Schools, Experts Say
http://malaysiandigest.com/frontpage/282-main-tile/637949-malaysians-need-the-dual-language-programme-to-enhance-english-proficiency-in-schools-experts-say.html
Dual language programme to continue in national schools, says Education Ministry
http://www.themalaymailonline.com/malaysia/article/dual-language-programme-to-continue-in-national-schools-says-education-mini#sthash.iIlVngiQ.dpuf


小学校に英語学習を導入するにせよ、早急に全国一律にするのではなく、保護者と校長・教員がよく話し合った上でその学校の希望として行うこと、そして必要な教材や設備などが整っていることを確認することが大切だということをマレーシアは学んだようです。

「愚者は自らの経験から学び、賢者はこれまでの歴史から学ぶ」と言います。

日本はこのマレーシアの歴史から学ぶことはできるでしょうか・・・




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